ふと思い出したこと
ふと、母の実家のことを思い出しました。
母の実家は、地元の駅前商店街でハンコ屋さんをしています。
よくある商店のように、表が店、裏は家というような建物でした。今年で87才になる祖母は、お客さんがいないときには居間で色々作業をしたり、テレビを見たり、パッチワークをしたりで、お客さんが来ると「はーい」と元気な声で店先に出るのでした。
店の入り口はガラスの引き戸で、開けると家のほうで「♪ポロポロポーン」という電子音がなります。お客さんが来たことは、この音でわかります。(剣淵の山田菓子店の自動ドアと同じ音です)
お店には昔からの馴染みのお客さんが訪ねてきます。100円均一のお店でハンコが買えるようになっても、インターネットで注文できる時代になっても、昔からのお客さんは、変わらず足を運んでくれるのです。
ハンコの他に表札やはがきの印刷も扱っていて、年末になると年賀状の準備で大忙しの様子でした。フィルムカメラの時代には、現像の受け付けもしていた気がします。
駅前商店街は、お祭りの時期になると人で溢れかえります。お神輿やお稚児さんの行列…。祖母の店の横には神社に向かう細い路地があり、そこには出店がたくさん並びます。小学生や中学生の頃は、店の2階の窓から顔を出し、友だちが歩いていないか探すのが楽しみでした。
いまは行く機会が減ってしまったけれど、とても懐かしくて好きな場所です。
祖母のお店と地元の商店街は、剣淵の商店や商店街と重なります。
お客さんが来ると店の奥から出てくる店主、昔馴染みのお客さんがちょっと一息ついたり、おしゃべりをしに立ち寄る場所…。そうした風景は、小さなころから見ていた風景と同じだったんだなぁ。と、気づいたのでした。
一方の町では開発が進み、店の目の前には、高層マンションが建つ予定です。
もう一方の町では、過疎化が進み、後継者のいない店が多くあります。
私はどちらも、さみしいなと思います。
小さな頃から変わらずに、なんでもない日常がそのまま続いていけばいいな。そのままの景色でずっと残ってほしいな。という気持ちは、地元にも剣淵にも抱いています。
時間とともに人も景色も変わっていくのは、仕方がないかもしれません。けれど、いいものや大切なものはそのまま残したり伝えたり、守ることが出来たらいいな。
剣淵町地域おこし協力隊 髙村匠子